ゴールデン・グローリー賞 (水野晴郎賞)

  • 根岸 季衣

    『サユリ』

    根岸 季衣

    公式サイト

  •  お節介なおばさんや優しいお母さん、どこか陰のある謎の女性店員など、数々の映画・ドラマで素晴らしい活躍を見せてきた名優・根岸季衣。ホラー映画『サユリ』では、主人公家族の認知症の祖母役ということで、霊の毒牙にかかってしまうのか…と思いきや、特級幽霊も逃げ出す最強おばあちゃんだった! 試写で鑑賞した際の興奮は今でもありありと思い出すことが出来る。

     本作は、押切蓮介の同名人気コミックを『貞子vs伽椰子』『コワすぎ!』シリーズの白石晃士監督のメガホンで実写映画化したもの。原作のコミックも、本格ホラーの前半パートと、幽霊を退治していくアクション後半パートでガラリと雰囲気が変わる所が大きな魅力であるのだが、実写映画はさらにそのギャップが激しく、根岸の熱演によって最高のシーンが連発されていく。

     夢のマイホームに移り住んできた仲良し家族を、一人ずつ呪い殺していく少女の霊。主人公・則雄以外の家族が次々と変死を遂げ、則雄の命も脅かされるが、突如覚醒したおばあちゃんの教えにより則雄自身も強く成長していく。幽霊を倒すためにはとにかく「命を濃くしろ」ということで、モリモリとご飯を食べ、体を鍛え、生命力を蓄えていく。孫祖母コンビの特訓シーンは『ベスト・キッド』の特訓シーンなみに爽快なのだが、その説得力は根岸自身が持っているパワーとエネルギーによって生まれているに違いない。また、覚醒後のおばあちゃんが独特のファッションをしているのだが、それは根岸自身からの「ジャニス・ジョプリンの様にしてみては」というアイデアからだったそう。演技力のみならず、演技にまつわる発想の素晴らしさにも脱帽である。

     1974年より活動をスタートし、数えきれないほどの作品に出演し、監督たちに愛されてきた根岸季衣。出演待機作も興味深いものばかりで、これからも命の濃いお芝居を観れることが楽しみで仕方がない。

    (中村 梢)

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